自分のお店をつくろう――そう心に決めたのは、ちょうど今から1年前。
当時在籍していたお店の店長と、「これから」の話をしていたときのことだった。
店長がふとこぼしたひとこと。
「まいまいくらいかっこいいんだったら、自分のお店なんてすぐ作れるでしょ?」
店長からしてみれば、なんてことのない一言。
……だったのかもしれない。
そのとき私の目が光ったのを、店長は見逃さなかっただろう。
あわてて言葉を引っ込めようとした気配まで、あの時のこと、ぜんぶ覚えている。
それでもわたしには、その言葉が
「自分で道を開いてもいいよ」という合図に聞こえたことは確かだった。
――どうして、そんなふうに聞こえたんだろう。
風俗歴は2年目。
在籍店舗でランキングで1位になった。
この世界に入って初めてもらった、金メダル。
嬉しかった。
でも、ちょっと息が苦しくなった。
数字を追いかけること。
わたしのやりたいこと。
どこかがずれているような、ざわざわした気持ち。
仲良しのお客様がお店の電話対応に心を乱して「今日は行かない!」と怒ったことがあった。
ほんの小さなことなのに、胸の奥がざらりとした。
“無理をさせていたのかな”
“本当は遊びたくなかったのかな”
そう思ったら、普段笑っている自分まで嘘に見えてしまうような気がした。
その後店長と何度も喧嘩をして、面談もして。
それでも結局、自分のなかに芽生えた違和感と、本当の気持ちは言えなかった。
だからこそ――。
わたしは思った。
自分の居場所を。
わたしと、わたしのお客様が
心から楽しんで過ごせる場所をつくりたいって。
そのためなら、がんばれる。
そのために、馬力を出したい。
そのために使う時間なら――惜しくない。
あの日の何気ないひとことが、
わたしが自分のお店をひらく大きな一歩へと変わった。
(つづく)

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