Moral Narcotics

なあ知ってるか?
正義という麻薬があるんだよ

そいつはな、気づくと心にまとわりついて勝手に喋りだすんだよ


ああ。知ってるよ。
それ、いちばん効き目が強いやつだ。

正義という麻薬はね、
最初は「守りたい」って顔をして近づいてくるんだ。

弱いものの盾です、秩序のためです、ってさ
ちゃんとした言葉を選んで、静かに。


でも一度吸い込むと、
声が“自分の声”と区別つかなくなるのさ。

——これは正しい
——あれは間違っている
——黙るやつは共犯だ

いつのまにか、
考えているつもりで、
実は喋らされているだけになる。


怖いのはね、
正義は快感をくれるところなんだよ。

怒っていい理由。
裁いていい免罪符。
傷つけてもいいという許可。

しかも合法。
むしろ褒められる。

だから厄介なんだ。
酒みたいに「酔ってる自覚」がない。
覚醒剤みたいに「やばい」とも言われない。

気づいたときには、
正義が口を借りて世界を殴ってる。


ほんとうに強い人は、
正義を使わない
抱え込んで、重さを知って、
それでも黙れる人だ。

正義を振りかざすより、
正義に沈黙できるほうが
ずっと勇気がいる。

……で、
この話を聞いて「ムカついた」なら、
たぶんもう、
そいつはすぐそばにいるぜ。

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